黒鯛(チヌ)落し込み釣りの基本餌は昔から蟹・イ貝・藤壺の三種と言われています。近年は釣り方も進化し、パイプや青コガネ、そして疑似餌など種類も豊富になってきていますが、今回はその中でも蟹にスポットを当て、前打ちにおけるグラブゲームの面白さを紹介してみましょう!
  
蟹餌は簡単でもあり難しい!?
  
 黒鯛(チヌ)落し込み釣りで使用される蟹餌は、岩ガニ・防潮ガニ・クモガニ・タンクガニなど様々な種類がありますが、餌屋に常備していたり、海岸の石をめくれば直ぐに採取できるのが岩ガニであり、もっともポピュラーな蟹餌といえます。
20161229築港(ベイト) 
 
 
 
 
 
 

 
 さて、この蟹餌のメリットは!?といえば生き餌特有のアピール度が高いこと。ハサミで威嚇したり目や足を動かしたりと釣り人側がアクションをあたえることなく、魚に存在をアピールしてくれます。そして一見すると硬そうなイメージの蟹ですが、黒鯛(チヌ)の強靭な歯においては軟らかい餌であり、食い込みの良い餌の部類に位置するので、スケ潮や冬季など活性の低い状況にチョイスしたい餌のひとつといえるでしょう。そして蟹餌のデメリットといえば、しがみつく習性によりフォールのコントロールが難しいこと。壁の落し込み釣りではハサミや足をとって針につけるパチンコなる釣り方があるのですが、せっかくのアピール度も半減以下になってしまうのが残念。またチヌの習性上、まずは蟹に一撃をあたえてから食いなおすことにより、ファーストアタックでなにか違和感を感じると口の中に入れない、すなわち針掛かりしないでカニグチャという状況が多々発生し、くやしい思いをさせられるのです。
20160416築港(カニグチャ) 
 
 
 
 
 
 
 
 
 こうしてみますと蟹ってなんてゲーム性の高い餌なのかおわかりいただけたでしょうか!? 次では効果的に黒鯛(チヌ)の口に針を掛けるまでのプロセスを考えてみましょう。
 
蟹餌の効果的な釣り方は?
  
 まず蟹餌が有効なフィールドは、やはり蟹が多く生息しているところ。蟹は物陰に身を潜める習性があるので、石積みやテトラポットが並ぶ場所が最適であり、大阪湾に見られる石畳の上にテトラポットが置いてある場所は格好のフィールド条件となります。また餌として使う岩ガニなどは水深の深いところには生息していないので、生息可能な水深での釣りを展開することが重要になります。
 次に蟹餌におけるフッキングはふたつのタイミングがあり、ひとつは最初の一撃時に間髪入れずにあわせること。アタリとしてはラインが踊る、穂先が跳ね上がる、または軽くおじぎするなど、手元に感じられない小さなアタリが多く、見逃しがちでかなりの集中力を要します。このタイミングでフックアップした場合は
20161117築港-4 
 
 
 
 
 
 
 
 
口先端の唇部分に針掛かりし、ベストなタイミングとして前打ち師の中にはこの掛け方にこだわる人もいるぐらいです。もうひとつのタイミングとしては一撃後の食いなおしの時で、前アタリ後の聞きアワセで掛けると針は口の中を滑り、針が外れにくいカンヌキ部分に
20160723ドッグ先(フッキング) 
 
 
 
 
 
 
 

「地獄掛け」といわれる掛かり方をします。
 テトラにおける前打ちでは、タックル全般にパワーがある上、強引なファイトを強いられることが多く、秋のマッスルでパワフルな時期や大型固体には得てして唇切れを起こすことが多々あり、確実に魚を仕留めたい場合には、カンヌキ部分に針を掛けることを視野に入れるのが得策です。
 そして蟹餌の仕掛けで注意すべきは、ラインや穂先の動きによる目感度や手元に感じる手感度のアタリをいかに効率良く釣り人に伝えられるかです。そのためにはバイトによる振動の伝達をスムーズにすために道糸とハリスの格差は抑え、重量のある針・オモリは一箇所に集める一点集中型のハリオモリが良いでしょう。
 これらをふまえて実際のアプローチでは蟹がものにつかまる習性を利用します。入り組んだテトラポットや石積みで蟹をフォールさせれば何かにすぐにつかまることでしょう。しかしこの状態からポロっと足をすべらせたかのようにはがして、さらにフォールさせるタイミングは黒鯛(チヌ)にとって最高のアピールであり、食い気をそそることになります。そのためには絶妙なラインテンションを作り出す繊細なロッドワークが必要であり、はがし過ぎて大きく蟹が動いてしまうと反って警戒心をあたえてしまい、食い気どころか逃げ出していまいます。いわばチャンスとピンチが紙一重の瞬間であり、この瞬間を制した者が黒鯛(チヌ)を手にすることができるのです。 
  
蟹餌のタックルを考える。
  
 蟹餌で使用するロッドで特に注目すべきは穂先にあります。ダイワ製品を前提として、小さな前アタリを掛けアワセていくなら、抜群の手感度を誇るSMT搭載モデルが良く、食い込み重視でじっくりタイミング見計らって確実に掛ける場合はしなやかなメガトップ搭載モデルが良いでしょう。また調子については感度(振動)伝達の観点からも、高トン数カーボンをブランクに使用しているMS調子がおススメであり、私の場合は波風が強くて穂先がブレる時はラインスラッグがあってもバイト感度を手元まで伝えきれるSMT搭載の「BJ SNIPER メタルチューンMS-52UM」、穏やかな天候でショートバイト気味な時はメガトップ搭載の「飛竜クロダイMS-63U」を状況に応じて使い分けています。
20130921メタルチューンMS-52UMプロト20170102築港(飛竜クロダイMS-63U) 
 
 
 
 
 
 
 
 
 次にリールですが、リールもラインを通してバイト感度を手元に伝えるタックルであり、シンプルな構造のものをチョイスすることが重要です。ドラグ機能のない「BJ75」「BJ85」
BJ85  
  
  
  
  
  
  
  

マシンカットで贅肉をそぎ落とした最軽量のリールであり、抜群の感度性能を誇ります。
   
 さて、年間を通して蟹餌の出番は多く、けれどもフォールやアタリの取り方がむずかしく、蟹餌を敬遠される方も多いかと思います。しかしゲーム性の高い蟹餌使いをマスターして苦手意識を払拭すれば、魚に出会えるチャンスも増え、より楽しい落し込み釣りの世界が広がるハズです。寒くて風の強い今だからこそ、蟹餌を練習して習得するのにグットタイミングではないのでしょうか!?
  
  
  
  
更なる一匹を求めて・・・